登山技術講習会


山岳地で発生する病気と怪我

登山は精神的なストレスや日頃の煩雑な生活から開放され、季節の移り変わりを体感しながら爽快な気分になれるすばらしいスポーツである。
しかし、中高年者は基本的に身体細胞の全てが、機能低下が始まっていることを知って対処しなければならない。
そのため登山を体を鍛える手段として捕らえるのではなく、趣味・楽しみ・生きがいの一つにすることができるなら、人生にとって素晴らしい心の糧となると思われる。
登山中に体調を崩さないことが基本
@日頃から意識的に、自分の体調管理をしておく必要がある。
A生活習慣病などの状況を把握し、その対処について予測しておく必要がある。
B中高年は体力低下が著しく考えと行動に差が生じるので、体力を基本に計画した内容で行動すべきである。
C年に1〜2回の健康診断を受け心肺機能や循環器の状況など、医師とコンタクトをとつておく必要がある。
D疲労回復が全般的に遅いので、日程、コース、難易度など体力に合わせ、十分休息をとる必要がある。
E登山で消費する熱量は 3000kcal〜4000kcal必要で、3食以外に行動中に補給する食料を準備すべきである。
F登山中の障害には筋肉痛・関節痛で、これらは体力低下が原因で起こることが多く日頃のトレーニングが必要である。
登山に関係した病気と怪我
1. 急性障害について
(1) 突然死
運動の途中で発症し一見健康な人に起きることが多く、ほとんどが在的心疾患が原因で、その予防は心臓のメデカルチェックと前駆症状を逃がさないことである。
(2) 急性腎不全
運動により筋肉が破壊され、筋肉中のミオグロビンが血中に流れ出し、腎臓の尿細管に詰まり尿が出なくなる。
運動後の筋肉痛、全身倦怠感、微熱、吐き気などがあり、尿の色がコーラのようになり乏尿、無尿となる。
ミオグロビン尿による急性腎不全のひどい時は、血液透析治療も必要になる。
(3) 電解質異常・低血糖・低体温
多量の発汗による電解質の異常や、エネルギー源の消耗による低血糖などがある。
(4) 循環不全
長時間の運動や負荷が強すぎる場合に、脱水や血管膨張で循環不全を発症する。
顔面や皮膚は蒼白となり、脈は触れにくく血圧も低下し冷や汗、吐き気、ひどい時は意識状態も低下するなど運動後におき易い。
さらに迷走神経反射が加わると、除脈ショックで心臓の一時停止もある。
循環不全は内臓の血流が低下するため、肝臓障害を併発することもある。
足を高くして手足を心臓に向かってマッサージするが、予防として水分補給や運動後のクールダウンは効果的である。
(5) 熱中症(日射病・熱射病)
熱中症は高温下で発生する障害の総称で、脱水などの循環不全から熱疲労、体温の異常上昇をきたらす熱射病である。
熱射病で体温の異常上昇とともに血液凝固障害や脳、心臓、肝臓、腎臓など臓器が傷害され死亡率も高い。
高温高湿度の環境では高体温・低ナトリウム血症などにより、熱中症を起こす可能性が高くなる。
運動時の水分補給は(食塩0.2%と糖分5.0%)の水が、脱水予防に有効である。
@ 熱疲労
抹消の血流が増大するには心拍出量が供給できないので、全身の脱力感、めまい、悪心、失神などの状態を呈する。
足を高くして手足を抹消しながら、中心部にマッサージをするが、吐き気や嘔吐で水分供給ができないときは病院に直行する
A 熱けいれん
血清ナトリューム低値をともなう脱水状態(血液濃度が増す)に対し、水のみを供給すると筋肉けいれんを合併する。= 生理食塩水0.9%を摂取
B 熱射病
体温の著名な上昇、意識障害、興奮状態、けいれん、中枢神経症、脱水にともなう血漿量低下などにより血圧低下を起こす、循環不全、低血糖、高熱による血管内皮障害による全身性血管内擬固症候群である。
熱射病の治療はとにかく体温を下げるように冷却すること、脱水に対して「水と塩分」を補給し救急蘇生のABCに準じて治療する(★Air-way気道 ★Bbrathing呼吸  ★Circulation環境)
太い血管のある首筋、脇の下、腿などを水やアイスパックで冷却する。
怪我と応急処置
(1) 傷の処置
出血しても血液自体の凝固作用で止血できるが、これを補うのが止血法である。
止まりにくい出血は傷の近くの動脈の心臓に近い方を、指で時間をかけて圧迫し続けると止血できる。
☆出血を防ぐため心臓より高い位置に部位を置き、傷口は泥汚れなどを水筒の水で清潔にして消毒を施し包帯する。
(2) 骨折
骨折は判断が付きにくいので、骨折と判断して処置をする。
★症状 @痛みがある A運動できない B腫れて内出血をしている C変形している D骨が皮膚の外に出ている
☆処置 動揺させないように本人が最も楽な姿勢にして、恐怖心から精神的ショック状態(顔面蒼白・冷や汗・冷感)になるので、元気つけや保温に気を配り骨折箇所を確認する。
骨折箇所が動かないように2関節以上に副木を当て、鎖骨・上腕部は自力で、大腿部や足首などは搬送・救助依頼をする。
開放骨折の場合は感染の危険があり、早急に下山体制の救助を依頼する。
(3) ,捻挫
ねんざは下山中に起きやすく、急な下り坂、雨に濡れた道、石ころ道、で起きやすく、部位は足関節に起きるが時には膝ねんざも発生する。
★症状 @腫れる A痛い B内出血を起こす
☆処置 安静にして水や雪で冷却しねテーピングと包帯で圧迫し足関節を固定し、腫れを引かせるために心臓より高く揚げて休ませる。
(4) こむらがえり
気温の高い日、長時間行動したときに起こりやすい。
☆処置 登山靴を脱ぎ膝を曲げ、ふくらはぎのマッサージをする。
足首部に切り込みを入れた大きな絆創膏をかかとからアキレス腱部まで貼る。
(5) 雪盲
雪渓や新雪の上を歩いたとき、強い太陽光線を受けて起こる目の炎症である。
★症状 @目がごろごろする A痛みがある B涙が止まらない
☆処置 @眼帯をして光を見ないようにする A水・雪渓で冷やす B24時間以上症状が続く時は眼科で受診する。 (予防サングラス ・白内症予防にも有効)
(6) 高山病
低い気圧・酸素濃度・寒冷・行動による疲労の影響を受け、限度を超えると症状が現れる。
★症状 頭痛、疲労感、食欲不振、吐き気、嘔吐、せき、息切れ、胸痛など一緒に現れる。