登山技術講習会

中高年登山者の現状

歴史的背景 @昭和20年代後半〜30年代にヒマラヤの巨峰が、各国登山隊によって登頂された。
A日本ではマナスル(8125m)の初登頂(1956年)に刺激を受け登山ブームが起きた。
Bマスプロにより新しい装備・器具が輸入され、国内でも生産されるようになり、昭和30年代後半から40年代中頃にかけ、国内登山は急速に発展して行った。
Cそれに比例して、大学山岳部や山岳会の遭難事故が多く発生した。
D困難な登山の実績はヨーロッパの岸壁登攀(クライミング)で実力を確かめ、その経験や技術はヒマラヤ登山や国内の登攀の推進力となつた。
E昭和50年代に入り供給過剰の装備や器具は、生命をまもる領域から使用の快適さ(ゴアーテックスなどの素材開発)や登山の安易さを要求されるようになった。(経験・鍛錬などの基礎的な技術を必要としないので、ある程度の登山が可能になつた)
Fヒマラヤ登山はより困難さの追及で、冬季、単独、無酸素、アルパイン・スタイルの手段が取り上げられ有名なプライマーが命を失う一方で、旅行業者におぶさつた海外登山で、ナダレや高山病で遭難する者も多くなった。
G国内では優秀な装備を着けた未経験者が、冬山に入って悪天候やナダレで致命的な遭難事故が後をたたなかった。
H経済が斜陽化するころから国内登山は、安全快適さに多くの便宜を与えながら、やがて衰退期に入っていつた。
I規則、義務を嫌う若者は旧来からの組織を敬遠し、伝統を持つ社会人山岳会や大学山岳部にも新人の入会が激減していった。
J若者がやまから離れるのと交替して中高年登山者が増加し、低山の登山にとどまらず北アルプス、沢登り、岩登りなどにも姿を見かけるようになつた。
これは社会全体の高齢化現象と経済的、時間的余裕など、中高年者が外に出やすい社会情勢になつたことが理由である。
K日本の登山は冒険の魅力を失った代わりに、作られた表面上の安全性と楽しさと健康願望が中高年者を引き付けたのだと思われる。
1. 中高年登山者の分類
(1) 継続型
○若い時代にそれぞれのクラブに所属し、厳しい先輩の指導で基礎技術を身につけ積雪期登山、岩登りなどの経験を持ち、現在なお自分の登山を実践するため節制やトレーニングに努めている。
○山登りを続けながら自分の体力の衰えを自覚し、長い経験の中で養われた防衛力を身につけている。
○登山の態度は控えめで危険予知が身につきね山岳遭難にいたることは滅多にない。
(2)
復活型
○.種々の事情により登山活動を中断していた者が、時間的・経済的余裕ができ再開したものである。
○若いときのイメージだけが先行して、体力・用具・技術など昔のまま引きづって、比較的難しい山にも入山する傾向にある。
○登山活動を中断していたので、体力の衰えや技術についても意識がなく、自然の変化に対しても若いときの経験でしか対応できない。(大きな事故につながる要素が潜在している)
(3) 初心者型
○中高年登山者は昭和50年代頃から増加しはじめたる
○女性は子離れ男性は定年など、生活環境の変化からはじまっている。
○中高年登山者の中には素直にリーダーの指示を聞く人も多く、講習会などの出席率も良いが残念なことに、十分経験を積んだリーダーに接することができない。
○指導者・経験のない単なる世話役リーダーがまとめる、小集団や組織とは言えない仲間同士で、指導者不在の山行わをすることが多く事故要因わはらんでいる。
2. 山岳遭難に関連する問題
(1) 身体や技術について
@自分の体力・技術の限界が解らないのに、実力不相応な山やルートを選ぶ
Aガイドブックや雑誌などのコースタイムを、鵜呑みにして計画をする
B熟練者向きなどの条件は無視する
C雪上、コ゜ーロの斜面など、下降時の歩行が下手で転倒・滑落しやすい
D歩行時にむやみに物につかまり、体重をかけるので枝が折れ転落する
E装備は立派だが、それを使う技術がない
(2) 精神意識上の問題
@体力や精神力を過信している。(戦時中・戦後わ生き抜いた思い込みがある)
Aがんばり過ぎに体力がついていかない。
B自分自身に危険意識がない。
C人の意見は聞かない。自説を曲げない。家族の説得も聞かない。
D小屋の経験者の意見も聞かない。天候の悪化を理由に止めても聞かない。
E登山のルールやマナーわ知らない。
F自分の職場の地位で物を考える。
G自分中心に物を考える。女性がリーダーや他の男性に甘える。
(3) 経験の問題
@登山の経験が無いか不足している。
Aハイキングの経験だけなのに、難しい高山に登りたがる。
B単純な日帰り登山の日数だけで、相当な経験をしていると思い込む。
C弱いもの同士の登山で、判断基準が極端に甘い。
(4) チームやリーダーの問題
@リーダーに能力がない。リーダーシップわ持たない。単なる世話役型である。
Aグループの結束力がない。すぐ分裂する。にわか仕立てのチーム。仲間の氏名・住所も知らない。
B行動中、勝手に別行動をとる。黙って帰ってしまう。
Cあちこちのクラブを渡り歩く。団体行動や共同作業ができず、仲間に迷惑をかけても平気である。
(5) その他の問題
@登山届けを出さないので、捜索の手掛かりがつかめない。
A家族に行き先や日程をいわない。予定外の山に行っても連絡しない。
B事故発生時に連絡する方法を知らない。
C遭難事故の後始末ができない。世話になって礼の一言もない。
D登山時の常識的な処置が取れない。疲労した高齢者にウイスキーを飲ませる。疲れるといって水を飲ませない。
E山へ行くと持病が出る。
F全部人任せで、どこに行くかわからない。ルートも分からない。
G年配者で体力もないのに、ひたすら単独行をする。
H山頂で食事をするとき隣にいても話もせず、ガスストーブでラーメンや湯茶を沸かし、人恋しいくせに自己満足した態度をする。
I数人で山へ行くと群れて、大声ではしゃぎ知ったかぶりをする。